若尾行政書士事務所

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家族信託の受託者の義務と責任

家族信託の運用のキーマンである受託者の義務と責任についてみていきましょう。
受託者には、次の義務が課されています。これらは法律上の義務であり、「家族だから」「親子だから」という理由で軽くなるものではありません。

1.受託者の義務

①信託の目的に沿って業務をする

契約書の定めに従うのはもちろん、個々の判断は信託目的を果たすためにくだす必要があります。

②他人の財産を預かる者として注意深く管理する(善管注意義務)

受託者は、他人の財産を預かる者として、その職業や地位などから通常期待される程度の注意をもって財産を管理しなければなりません。
とはいえ、家族信託の受託者は多くのケースで家族であり、専門家ではありません。財産管理において専門家ほどのレベルを求めるのは酷であり、あくまで受託者の職業や地位を考慮して要求される水準が定まります。
また、契約によって善管注意義務の程度を重くしたり軽くしたりすることは可能です。たとえば、自分の財産と同程度の注意義務に軽減できます。もっとも、注意義務を完全に免除することはできません。

③受益者の利益に反する行為をしない(忠実義務)

受託者は、受託者自身のためではなく、受益者のために忠実に信託事務の処理などをしなければなりません。忠実義務の典型的な内容が、利益相反行為や競合行為の制限です。

④すべての受益者のため公平に業務にあたる(公平義務)

複数の受益者がいた場合、公平に対応しなければなりません。

⑤信託財産と自分自身の財産をはっきり分ける(分別管理義務)

受託者は、信託財産に属する財産と固有財産(受託者の個人財産)や他の信託財産に属する財産とを、分別して管理しなければなりません。

⑥業務を第三者に委託しても任せきりにしない

税理士や不動産管理会社などに業務を委託することはできます。しかし、委託したからといって受託者の責任がなくなるわけではありません。委託先を適切に選び、その業務内容を確認・監督する責任があります。

⑦業務内容について報告する

定期にあるいは要求の都度、受益者に活動の報告・説明する義務を負います。

以上の義務に対して受託者が法律や信託契約に違反した場合には、

  • 損害賠償責任
  • 原状回復義務
  • 不当な利益の返還
  • 受託者の解任

などの責任を負う可能性があります。たとえ悪意がなくても、管理が不十分で受益者に損害を与えた場合には責任を問われることがあります。「家族だから大丈夫」というわけではありません。

2.受託者の責任

受託者は、信託財産を管理する立場ですが、責任は信託財産の範囲に限定されるわけではありません。
例えば、受託者が信託法や信託契約に違反し、その結果として受益者などに損害を与えた場合には、受託者自身がその損害を賠償しなければならないことがあります。
この責任は信託財産の範囲に限定されるものではなく、受託者個人の財産にまで及ぶことがあります。
つまり、受託者は義務違反があった場合には、自らの財産をもって責任を負う可能性があるという点に注意が必要です。
もっとも、受託者が適切に職務を行っている限り、直ちに責任問題となるものではありません。重要なのは、信託契約の内容を守り、適切な財産管理を行い、必要な記録や報告を怠らないことです。

家族信託は、受託者に大きな権限を与える制度である一方、その権限に見合う責任も課している制度であることを理解しておきましょう。
家族信託では、「誰を受託者にするか」が最も重要なポイントの一つです。
受託者には財産を管理する大きな権限が与えられますが、それは自由に使うための権限ではなく、受益者のために適切に管理する義務を果たすための権限です。
家族だからという理由だけで受託者を決めるのではなく、その責任を理解し、誠実に役割を果たせる人を選ぶことが、家族信託を成功させる第一歩といえるでしょう。

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